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大澤 真幸
岩波書店
¥ 819
(2008-04)
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ネタの宝石箱すぎて、ぜんぜん咀嚼しきれてないんですが…
ざっと読み返してみただけでも、
天皇、三島、全共闘、万博、ガンダム、村上春樹、宮崎事件、
オウム、エヴァ、少年A、萌え、舞城、Air、ひぐらし
などなど、興味深い要素がてんこもりです。
たとえば、前半のほうでおもしろい話題として、
全共闘運動の延長上に、一九七二年の連合赤軍事件がある。連合赤軍事件に関して、笠井潔や大塚英志は、次のようなおもしろい監察を披瀝している。すなわち、連合赤軍には、二つの価値観がせめぎあうように共存していた、というのである。「かっこいい」という価値観と「かわいい」をよしとする価値観が緊張関係を保っていた、というのだ。「かっこいい」とは、内容を無化され、純粋に形式まで還元された「理想」ではないだろうか。それに対して、「かわいい」は、すでに「虚構の時代」に属する感覚であろう。要するに、連合赤軍事件の中に、理想の時代に由来するベクトルと虚構の時代へと向かおうとするベクトルとがともに作用していたのである(大塚「サブカルチャー/文学論」)。
ここは、自分なりに「かっこいい」を
「熱血」に、
「かわいい」を
「萌え」に置き換えて読んだ。
よど号ハイジャック事件の赤軍派は、
「我々はあしたのジョーである」と宣言したらしいけど、
「熱血」というのはまさに「モーレツ」的というか
「高度経済成長」的というか、理想に向かって邁進していた
時代の名残りなんだなあ、と思う。
力石徹のいうところの
「少年院流のやり方」というか。
「熱血」と「萌え」でまっさきに連想するのは、
やっぱり
「機動戦艦ナデシコ」。
あれはある意味、オタクたちにとっての
「熱血」の合同葬儀だったのかもしれない…
ルリルリが「あなたの一番になりたい」を歌ったとき、
「熱血」というひとつの時代が完全に終わりを告げたんじゃないかなあ。
しかも、ダイゴウジ・ガイと白鳥九十九というふたりの「熱血」を
用意して、両方とも物語のうえで葬り去るという念の入れよう。
その「熱血」が象徴していた「理想」の時代の自省や懐古として、
「オトナ帝国」や
「三丁目の夕日」があるんだろうけど、
いま書いてるあいだにもいろんな連想が浮かんで、書ききれない。
ふと、東浩紀と笠井潔の往復書簡『動物化する世界の中で』を
読み返してみたくなった。いまとなっては、
あの「決裂」にこそ、なにか意味があったようにも思える。